わたしのおすすめ

おすすめします。

☆17_『サウスポイント』よしもとばなな

(☆にしてるけど貸すことはできます!)
初めてここで紹介するばななさんの本を、
すごく悩んでたんだけど、
流れでどどっとまた読んでしまったから
しょうがない、
『サウスポイント』を紹介します。

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この話は『ハチ公の最後の恋人』という作品の
後日談となってるが、
私が去年最初に読んだときは
『サウスポイント』の方を先に読んだ。
そしてそれで全然よかった。

ハワイを舞台にした、引き裂かれた二人の話。
主人公のテトラちゃんとその親友だった珠彦くん。
小学生のこの二人が、超えてきたものの大きさに、
ぐっとくる。
何がどうということではなくて、
でも魂の栄養が必要なときに、
「大丈夫」である関係は稀有だ。

そんな存在に会えなくなってからも
感謝し続けたことは、
確かに気持ち悪いかもしれない、
妄想かもしれない。
でもその気持ち悪さがその人をその人たらしめている部分でもあるし、
その人の何かを救ってきたのだ。

そしてその先を鮮やかに軽やかに描き出す、
ハワイはやっぱり魔法がかかった島なんだなと思った。

文庫版の装丁の写真も、すごく好きです。

●16_『いきたくないのに出かけていく』角田光代

SWITCHで連載していた角田光代さんのエッセイ。
『大好きな町に用がある』の続き。

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角田さんの旅エッセイはけっこう好きで、
ちょこちょこ読む。
この前たまったまマツコが表紙のけっこう昔の
SWITCHを手に取ったとき、
角田さんのエッセイを見て、
それがすごくよかった。
ので、あ、これあれが載ってるかな?
と思って買ってみたのだが、載っていなかった。
『大好きな町に用がある』の方に
載っているのかもしれない、
けっこう前のだったし。

それはともかくとして、私は旅が好きではない。
けっこう緊張するし、
前提が分からない場所に行くストレスったら…
日本で地方に行く時とか、
いくら下調べしても分からないことだらけで、
あーーーーー!!!!ってなる。
(途中で下調べをあきらめるまでがセット)

でも、それを越えていったときに
Web上だと立ち上がってこなかった街の雰囲気が、
こういうことだったのか、と腑に落ちたり。
そこでしかかげない匂いにひたったり。
やっぱり独特の残るものはあるのだ。

その感覚が、(旅好きな)角田さんにも
あるんだなあと思って
ふふっとなった。

私が好きなエピソードは
スペインでのマラソンのくだり。
なんか、旅って心のどこかを開いていると
こういうこと、起こるよなあ。

●15_『銀河で一番静かな革命』マヒトゥ・ザ・ピーポー

正直、著者名から「うわっこういう系か」感を
感じた人?
しかも、
内容が「あと数日で世界が終わる地球での話」。
私もうっへーと思いつつ、
装丁がなぜか不思議としっくりきたのと、
ばななさんがお勧めしてるしな~
と思って読んでみました。

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すごかった、水のようだった。
けっこう言葉が添加物のように
不自然に残ることってあるんですが、
この人は一見そうみえそうな言葉を
連ねていながら、
全くそれがない。
本当に必然の、
エゴから一番遠いところの言葉なんだと思いました。

4人の人物から見た話が
リレーのように何周も廻る。
そのうちの3人は無機質な乾いた感じ・
脱水症状の時のようなだるさをもっていて、
それはほんとうにこういう人いる、
という感じでよく分かる。

でも、それが大げさでも投げやりでもない感じで、丁寧に続いていく。
無限の未来も迫りくる絶望もなくて、
虚無とは正反対の位置にいる話。
なんでなんだろう、本当に不思議だ。

人は終わったら溢れて一緒になって
境目がなくなってしまう。
それはそれで幸せだから、
今は今で境目を、輪郭を優しくなぞりたい。
そんなことを幸せな余韻の中でおもった。

最後の親子の言葉のリレーが、大好き。

啓発書でも、スピリチュアルでも、
ポエミーでもない。
人生の果実を味わうって、
こういうことなんだなあと
しみじみと食べました。

☆14_『天気の子』新海誠

うまくおすすめはできないのですが、そしてこういう書き方は初めてしますが、ぜひ映画館に足を運んで見てください、お願いします。

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今日見てきました、そして帰りに本も買いました。

もはやこの人たちが他人じゃなくなっているなんて思いもしなかった。
いい映画かどうかはわかりません。そういう判断の仕方ができない。
ただ、間違いなく私にとっての大切な人たちが、一生懸命生きていました。
だから、ぜひその姿を見てやってください。

☆13_『海の幽霊』米津玄師

初、本じゃないものが入ってきました。笑
今日『海獣の子供』という映画を見てきた。
すごくよかったが、でも結局主題歌のこのMVにすべて入ってると思う。
下記、是非みてみてください。

https://youtu.be/1s84rIhPuhk

まず、曲について。
米津玄師さんは基本あまり好きな感じじゃなかったのだが、一年半前台北に行った帰り、船橋駅の肌寒い春一番の中で、Lemonが頭の中で鳴り止まなくなった。
当時は何でだろうと思ってたが、年末の紅白でLemonがレクイエムであることを知って深く納得したし、そのステージの歌は本当に祈りがあってよかった。
だけど、この海の幽霊はもう段違いでいい。
私の中の圧倒的な大いなるものへの祈りの歌で、ほとんど聖歌なんじゃないかとおもう。

そしてMVについて。
これは『海獣の子供』のシーンをつなぎあわせてできているのだが、本当にびっくりするほど私が普段見えているヴィジョンに近い。
いろんなものがめぐるましくきらめきながら展開して、そこを貫く一筋の理がある。
ロジャーラビットでもスターウォーズでもなくて、私の美観はこういう感じなのだ。
言葉なくめくるめく様が、いつも実家でみている
星空の下を思い起こさせた。

今すぐこの身を投げ出して、
この歌を宇宙にささげたくなる。
そういう祈りの歌です。

●12_『スプートニクの恋人』村上春樹

村上春樹さんの本を読むのは2.75回目くらい。
(ノルウェイの森と、1Q84book1前編、あとはじめての村上春樹、みたいなアンソロジー)
それで、今回いろいろ気づいたことがあった。

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スプートニクの恋人は、1999年の作品。
語り手は一貫して「僕」だが、主人公は「僕」と仲がよく、ぼくが一方的に恋をしているすみれだと思う。
そのすみれの、竜巻のように猛烈に吹き荒れ、去っていってしまった恋の話だ。

すみれは小説家志望で恋をしたことがない。大学を卒業してひたすらもんもんと文章を書き続けている。外見にもむとんちゃくで、なにかきらっとしたものをどこかで追い求めていて、そういう意味で「僕」と大変に話が合うし仲がいい。
ある日ミュウという年上の女性への、本人もどうにもならない恋のうねりに突如まきこまれてしまう。
冒頭に「文字通りすべてを巻き上げていってしまった」とあったが、本当にそうとしか言いようがない話だった。

これ以上つっこんでしまうとかなり結末に関わってしまうので、説明が難しいが、
やっぱり村上春樹作品特有の「孤独」の感覚故の話だと思う。
この「孤独」を生き全うしようとした結果、そうなってしまったという話なんだと思う。
そういう意味で1999年時点での村上春樹という感じがかなりする。(2.75作品しか読んでない私のイメージですが)

また、作品とは直接関係ないが、今回村上春樹作品を読んで、読み手の自分の容量が広がったんだな、というのが如実にわかった。
ノルウェイの森を読んだときは、めちゃくちゃ苦しい時だったのもあり、頭では理解したふりをしつつ、基本的に自分と全く違う登場人物たちを受け入れられていなかった。
この人たち何でこんなことをしているんだろうと思っていた(緑だけはぶち切れた私に似ていたのでシンパシーを感じた)。
だけれども今回は、読みながら登場人物をちゃんと人間に感じた。すみれがすこし私に似ている、というのを差し引いても、心のどの部分がどう永久凍結されているのか、とか、なぜこのように生きてしまうのかということへの私自身の眼差しが変わっていて、圧倒的に色鮮やかに見えた。
私がすごいという話ではもちろんなく、ささやかな人生の厚みを感じたできごとだった。

自分と近くても遠くても、やっぱり村上さんは唯一無二の作家だと思う。
その距離を感じるために、読んでみるのをおすすめします。

●11_『ねこのおうち』柳美里

ねことそのおうちの小説で、

ニーコのおうち

スワンのおうち

アルミとサンタのおうち

ゲンゴロウとラテとニーコのおうち

という章立てになってます。

全部の章がゆるやかにつながってます。

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私はねこが特別に好きではない、どちらかというといぬ派だし。

でもいつも、すっと生きてる近所ののらねこの姿は、ひそかに尊敬している。

そんな私がこの本を手に取ったのは、後輩に読みます?と手渡されて

じゃあ…となったからだ。動機はそんな強くない。

 

でも、全部読んでみて、ちゃんとおいしいものを食べたような気持ちになった。

本の構成としてもお話としてもおもしろい。

いろんなおうちがでてくるけど、それぞれの歪み方とかしょうがなかったんだろうな…感とか、なるほどと思う。

そしてちょっとずつそれぞれのおうちがリンクしているようすが(みんな同じ町の住人なのです)、すごくリアルだった。

お互いのおうちの事情って少し関わっただけだと見えないから、基本は憶測をするかそこまで思いを馳せないのが通常だと思う。

でも小説では視点を変えて話を展開していくことができるから、ん?って思ったおうちの背景やその後などが見えてなるほど、ってなるし、実際の世界もそこが見えずに関わっているんだろうなという気付きがあった。

その上で、ねこという自分の生を全うするのみの存在がかかわって、おうちの人たちが助けられる様子がほわっと描写されている。

ねこ好きでもそうじゃなくても、おすすめです。