わたしのおすすめ

おすすめします。

●12_『スプートニクの恋人』村上春樹

村上春樹さんの本を読むのは2.75回目くらい。
(ノルウェイの森と、1Q84book1前編、あとはじめての村上春樹、みたいなアンソロジー)
それで、今回いろいろ気づいたことがあった。

f:id:gaogao5:20190715224044j:plain

スプートニクの恋人は、1999年の作品。
語り手は一貫して「僕」だが、主人公は「僕」と仲がよく、ぼくが一方的に恋をしているすみれだと思う。
そのすみれの、竜巻のように猛烈に吹き荒れ、去っていってしまった恋の話だ。

すみれは小説家志望で恋をしたことがない。大学を卒業してひたすらもんもんと文章を書き続けている。外見にもむとんちゃくで、なにかきらっとしたものをどこかで追い求めていて、そういう意味で「僕」と大変に話が合うし仲がいい。
ある日ミュウという年上の女性への、本人もどうにもならない恋のうねりに突如まきこまれてしまう。
冒頭に「文字通りすべてを巻き上げていってしまった」とあったが、本当にそうとしか言いようがない話だった。

これ以上つっこんでしまうとかなり結末に関わってしまうので、説明が難しいが、
やっぱり村上春樹作品特有の「孤独」の感覚故の話だと思う。
この「孤独」を生き全うしようとした結果、そうなってしまったという話なんだと思う。
そういう意味で1999年時点での村上春樹という感じがかなりする。(2.75作品しか読んでない私のイメージですが)

また、作品とは直接関係ないが、今回村上春樹作品を読んで、読み手の自分の容量が広がったんだな、というのが如実にわかった。
ノルウェイの森を読んだときは、めちゃくちゃ苦しい時だったのもあり、頭では理解したふりをしつつ、基本的に自分と全く違う登場人物たちを受け入れられていなかった。
この人たち何でこんなことをしているんだろうと思っていた(緑だけはぶち切れた私に似ていたのでシンパシーを感じた)。
だけれども今回は、読みながら登場人物をちゃんと人間に感じた。すみれがすこし私に似ている、というのを差し引いても、心のどの部分がどう永久凍結されているのか、とか、なぜこのように生きてしまうのかということへの私自身の眼差しが変わっていて、圧倒的に色鮮やかに見えた。
私がすごいという話ではもちろんなく、ささやかな人生の厚みを感じたできごとだった。

自分と近くても遠くても、やっぱり村上さんは唯一無二の作家だと思う。
その距離を感じるために、読んでみるのをおすすめします。