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●09_『人生をいじくりまわしてはいけない』水木しげる

水木しげるさんの、様々なところでのインタビューやエッセイを集めた本。
それぞれ個別で書いているのだが、どれも水木さん自身の人生で起こったことについてなので、読んでいくと水木さんの実体みたいなものが浮かび上がってくる。

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私実は(おそらく中高でそういうの読み過ぎたせい)
年輩の人が若い人に説教垂れる系が
好きじゃなくて、
この本も読む前はそうなのかな~?って思ってた。
でも読んでみると、まあ時代が時代だし
ほのかにそういう風味があるものの、
そんなことよりも水木さん自身の生きてきた何かが
体ごと伝わってくる感じで、
ああ水木さんってこういう人だったんだなあって
しみじみ腑に落ちたし好きになった。
私的には吉本ばななさんとのび太
足して2で割った感じ笑
本当に、のんびりして、絵を描いて、
妖怪のことを考えてたい人生なんだな~と。

ざっくりにたテーマのインタビュー・エッセイを
それぞれ章立てしてまとめてあるのだが、
二章の戦争の話が、特に本当に染み入った。
南方にとばされ、左腕を失い、
土人(水木さんのいう先住民)と友達になる話。
ほんとにあったことを、様々な角度から
何度もその章の中で読むことになるので、
水木さんにとっての原体験であり
人生の核みたいな部分が、胸に迫る。
 
水木さんは、のんきだ。
とてつもなくのんきでいられない戦争は、
つらかったろう。
そして、そこでであった土人の方たちとの
奥からじんわり伝わる思いの交わりは、
水木さんの何かを救うに足りたろう。
手の傷から赤ちゃんのにおいがしてきて
治っていった過程は、
私が今まで読んだ中で最も押しつけがましくない
「生かされている」の話だった。

こうやって、多くを語らずとも
浮かび上がる影で、生き様を伝えられる。
ただ自分でいることの柔らかさで
幸せな気持ちになる本です。